【みなと新聞】動きだす北海道サーモン養殖 秋サケ不漁、ロシア海域禁漁で危機感
【漁業・養殖】和サーモン津々浦々〈1〉

2020.10.12

 全国津々浦々でサーモン養殖が広がっている。天然魚の不漁を補うため漁業者が海面養殖にチャレンジしたり、異業種の企業が陸上養殖に参入する動きが相次ぐ。地域名などを冠した「ご当地サーモン」も増えた。旋風を巻き起こす国産サーモン養殖の最前線を連載で紹介する。

 北海道はアジア屈指のサケ・マス産地。シロサケ(秋サケ、トキサケ)を筆頭に、サクラマスやカラフトマス、かつての北洋漁業での沖獲りベニサケなど「天然」の宝庫だった。しかし近年は北洋の流れをくむロシア海域流網漁がなくなり、ふ化放流事業で成り立つ秋サケ漁も温暖化などを起因に回帰低迷が続く。そんな中、光明を見いだそうと養殖事業に乗り出す動きが出ている。

■ 大樹漁協 ■

 大樹漁協(大樹町)の若手漁業者でつくる「大樹サクラマス養殖事業化研究会」(高橋良典会長)が全国初のサクラマス海面養殖に挑戦している。主力の秋サケ定置網漁の不漁が続き、危機感を抱いた漁業者が勉強会を重ね、今春からイケス1基で3カ年計画の実証試験に臨む。

 5月下旬に1尾70グラム前後の稚魚360尾を、深さ3・5メートル、5メートル四方ののイケスに放った。7月下旬の生き残りは約350尾で、最大1尾500グラムまで成長。水温が高い夏も減耗なく乗り越え、9月時点では「大きい魚は900グラム前後まで成長した」(高橋会長)。1尾1キロ台まで育てて11月下旬から12月に池揚げを予定する。

■ 根室4漁協 ■

(記事中の見出し:根室ベニ復活の夢へ2年目)

 根室市と根室、歯舞、根室湾中部、落石の4漁協でつくる「根室市ベニザケ養殖協議会」は、2016年のロシア海域サケ・マス流網漁の禁漁以降、マーケットからほぼ姿を消した国産ベニを養殖で実現することを目指す。21年度末の事情化判断に向けた実証実験は2年目を迎えた。

 直径3メートル、深さ3メートルのイケスを根室港内に設けている。昨年は7月中旬に稚魚188尾(平均重量375グラム)を放流。12月に池揚げしたのは88尾で生残率は約47%。平均重量は836グラム、平均体長37センチだった。大きい個体は重量さ1・4キロ、体長40センチ前後になった。

 今年は7月上旬に稚魚229尾(平均重量291グラム)を放った。根室市水産研究所では「ベニ養殖は知見が少なく、昨年の結果を評価するデータがない。ただ環境変化などに弱いとされるベニが半分生き残ったのは良い結果だと思う。昨年の知見を生かし、今年はさらに生残率が高まるよう取り組んでいる」(工藤良二水産指導主幹)。昨年同様に12月の池揚げを予定している。

北海道でのサケ・マス海面養殖は冷涼な環境を生かして、春に池入れして夏を越えて、冬に出荷するサイクルが可能だ。水温が高くなる夏前までの出荷が多い本州産地とバッティングしない。ターゲットとするのは輸入物が席巻する生鮮マーケットで年末の需要期の出荷を狙う。大樹の高橋会長は「これまでの北海道のサケといえば冷凍か塩蔵。生で食べられる道産養殖サーモンの実現を目指したい」と意気込んでいる。

[みなと新聞2020年10月12日18時20分配信] https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/