東京大学の佐藤克文教授は10日、産学協同団体「ALANコンソーシアム」が開いたオンライン上の講演会「ALANフォーラム-新しい事業領域としての海洋産業」で、海洋動物を“代行役”とし、海の環境を調査できると期待した。動物にセンサーやカメラなどをつけて環境データを収集、集めたデータをインターネット上に集積して広範なデータベースにするという「IoA(動物のインターネット)」を提唱。IoA実現へ、水中通信技術・給電技術が役に立つと見込んだ。
気象予報の進捗などにも期待
佐藤教授はIoAの例を列挙。動物につけたセンサーやカメラに水中無線によって給電を行い、温度や風向・風速、波浪、潮流の状況、海洋プラスチックや餌生物の分布などのデータを集め、水中や船舶の通信機器からインターネット上に即時に整理できそうだと期待した。データが充実すれば海洋環境への対策だけでなく、気象予報の進歩などが期待できるという。
佐藤教授は「これまで野生動物保全は『絶滅してはかわいそう』というものだったのでは。だがこれからの理想は、海洋動物が環境を観測し、人間にも互恵的な共存ができること」と展望。長期的な調査研究に向けた資金確保を課題に挙げた。
また同会では、海藻を食害するウニを蓄養して商品化しているウニノミクス社(オランダ)、温室効果ガス排出の少ない電化船を開発推進するe5ラボ(東京都千代田区)も自社の活動を発表した。
同コンソは電子情報技術産業協会のプログラムの一つで、複数の企業や大学などが連携して水中環境で使える光応用技術や関係資材を開発し、新たな市場の創出を目指そうという趣旨。水中でのLiDAR(離れた物体に光を当てて距離や形を調べる技術)、光無線通信、光無線給電などの技術について「特に養殖や橋脚の点検に有効」(同コンソ)とみている。
[みなと新聞2021年6月18日 18時20分配信]
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