【みなと新聞】水産庁の施策 全漁業デジタル化へ行程表
27年目標にデータ収集体制整備
『スマート水産業特集』

2020.12.17

 水産庁はスマート水産業の実装に向け、具体的な目標を掲げている。昨年3月に公表したロードマップによると、2027年までにデータ収集・活用のシステムを構築し、全国の主要な漁業・養殖業現場の全てで生産活動をデジタル化。有用魚種の水揚量を電子的に把握し、資源や環境の評価・管理、操業や流通の効率化、水産物の付加価値化につなげる。実装に向けた課題については、外部の識者らを招いて協議を続けている。

スマート水産業の推進に向けたロードマップ

 ロードマップの主な内容は次の通り。21年度には資源データ収集体制を全国に構築、従来データの限られた沿岸魚種の資源状態を科学的に評価できるようにする。そのために開発中のスマホアプリによる操業日誌提出、漁船に機器を備え付けての水温や位置情報のデータの自動取得、産地市場での魚種別水揚量の電子報告などを進める。

 従来紙ベースで行われてきた大臣管理漁業の漁獲報告は、23年度までに電子データ化して速報性と正確性を高める。電子報告も順次、沿岸漁業に拡大していく。より多くの魚種の資源状態や漁獲状況を把握し、漁獲可能量(TAC)順守の確認などにも役立てる。

 24年度までに衛星データ利用の処理を高速化・高解像度化し沿岸域へ対象を拡大。海表面の水温や植物プランクトンの発生状況を把握することで高水温や赤潮を予測し、養殖魚が死ぬのを防ぐ。栄養塩の過不足などが野生資源に与える影響も追いやすくなる。集めたデータは資源や環境の状態把握だけでなく、海況や漁場の予想に活用。予報は公表し、操業の効率化につなげる。釣り機の開発などで漁労の手間も省いていく。

 水産物を付加価値化する「バリューチェーン産地」を23年度までに全国10カ所以上に構築。同産地ではセリをネット上で行うなどで、スピーディーかつ産品の出所が明らかな形で水揚げや取引を行う。画像センシングとロボット技術を合わせて魚体をサイズ別に自動的に仕分けるなど、水産加工や流通も効率化する。

 ロードマップ公表後間もない昨年5月には、識者らを招き「水産業の明日を拓くスマート水産業研究会」(会長・宮下和士北海道大学教授)を招集。研究会は今年3月まで活動を続け、成功事例づくりや、水産現場がスマート化に悪いイメージを持たないための収集するデータの公開範囲の設定、入力作業の軽減に向けたデータの標準化、スマート化の意義を理解できる人材の育成などを提言した。

 8月には「水産分野におけるデータ利活用のための環境整備に係る有識者協議会」の活動を開始。漁業者が企業秘密的に扱っている漁場などの情報をどこまで秘匿するか、漁業地域ごとで使用する情報システムや魚種名に違いがある中でいかに統一的なシステムをつくるか、漁業者にデータ提供を求めるにあたりどのような見返りを用意できるのか、などを研究者や漁業団体、法律家などと議論している。来年2~3月には同会の概要案をまとめる予定だ。

 また12月、スマート水産関係の予算として、補正・来年度当初合計26億円を獲得見込みとなった。

[みなと新聞2020年12月17日18時20分配信]
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