福井県水産試験場漁業管理グループの前川龍之介主事は10日、オンラインでのマリンITワークショップ2021で、底引網漁船による漁獲データの速報について解説した。同県の底引網漁船のうち約1割の7隻から協力を得て、タブレット端末や各種センサーなどを通じ、海洋環境や漁獲物などの速報をコンピューター上に整理。保護の必要な稚ガニ・小型魚などがどの漁場に多い、少ないと即時に把握できることで、将来的には資源管理にも役立てられる可能性があるとした。
同底引網漁業者らは従来から、一定サイズ以下の小型ズワイガニが獲れた際の再放流に取り組んでいるが、再放流しても死んでしまう稚ガニは2~4割(冬の場合。秋や春はより高い)に上る。同水試はかねて一部の漁業者に要請し、操業日誌のデータを整理、どの漁場で操業すれば稚ガニを獲らずに済むかを研究してきた。紙の日誌は年1度しか整理できず、同じ漁場が翌年まで稚ガニが少ないままとは限らなかった。そこで、電子機器を使い、ネット上でリアルタイムの情報共有を始めたという。
機器類を用いて網を引いた位置や時刻、魚種別サイズ別漁獲量、漁場の水深・水温などの速報を受信。これらをコンピューター上で整理して活用を目指す。
前川主事は講演後、本紙にデータ報告の拡大について「データ提供には謝礼を払っているが、基本的には漁業者の皆さまのご好意。若手を中心に、資源状態や環境条件にご興味を持ちご協力くださっている。主要魚種以外はデータ報告システムにない場合もあるが、そうした魚が獲れた場合にも後日、漁師さんからご連絡いただいてリストに加えている」と説明した。
同ワークショップははこだて未来大学マリンIT・ラボ(北海道函館市)が開いたもの。
[みなと新聞2021年9月16日 18時20分配信]
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