「ロードマップ2025」策定
地球規模で動物栄養・飼料事業を展開するニュートレコ(本部・オランダ)は、水産養殖部門のスクレッティングらグループ各社を挙げて持続可能な製品とサービスを提供するサステナビリティー戦略に取り組んでいる。2012年から実践してきた「ビジョン2020」の成果を引き継ぎ、さらに発展させていく新戦略「ロードマップ2025」をこのほど策定。「健康と福祉」「気候と循環」「良き市民」の3つのテーマから具体的な目標を設定し、すべてのステークホルダー(利害関係者)と従業員、さらには発展途上国含め世界に良い影響をもたらす取り組みを、今後5年間で進めていく。
健康と福祉
重要ポイントとして薬剤耐性問題(AMR)を明記。世界保健機関(WHO)の予測では2050年には抗生物質が効かない細菌感染症で死亡する人の数が、現在の死因トップ数のがんを上回るとある。現在、畜産分野の8割が抗生物質を使用しており、水産分野の使用率も低くはない。
「動物飼料に関わる企業として果たすべき役割は非常に大きい」とし、①脱抗生物質を戦略的に進める顧客サポートの専門家チームの配備②国際的な動物福祉の認証取得③政府と連携した規制改革の推進④抗生物質の使用は、獣医師の直接監督のもと、有効な臨床診断結果が得られた場合に限る⑤WHOの「人間の健康にとって決定的に重要なもの」のリストに掲載されている抗生物質や関連医薬品を使用しない―などを具体的な目標に掲げている。
スクレッティングジャパン(伊藤良仁社長)は「世界ではAMRへの意識が高まっており、日本社会にも同様な流れが来る」との認識のもと、免疫力を高める効果が期待できる製品提案や新商品開発を積極的に進めるなど、抗生物質を使う必要のない健康な魚づくりを後押しすることなどでAMRに対応する考えだ。
気候と循環経済
地球温暖化と気候変動による自然災害が全世界で起こっており、温室効果ガス(GHG)の削減が喫緊の課題となっている。
GHG排出削減については、エネルギー効率化プログラムによる目標設定の他、ライフサイクルアセスメント(LCA)の手法を取り入れた持続可能な原料調達、新規原材料の活用など、科学的根拠に基づいた企業における温室効果ガス排出削減目標(SBT)を導入する。
バリューチェーンの各段階でパートナーと協力し、自社工場の飼料製造に関わるエネルギー使用量および原料調達活動のCO2排出量を大幅削減することも目標に掲げる。事業活動を通じて直接発生するスコープ1(飼料製造等自社排出)および2(電力等間接排出)は、エネルギー削減と再生可能なグリーン電力を購入するなどし、2030年までに18年比で30%削減を目指す。外部サービスの購入で発生するスコープ3(原材料・商品の調達・配送、通勤など)の排出量は15%削減を掲げる。
一方、飼料原料となる水産天然資源は「循環」をキーワードに、その責任ある利用および生物多様性と生態系の維持・促進に取り組む。原料の魚粉は、国際魚粉・魚油機構の責任ある調達基準(Marintrust)や海洋管理協議会(MSC)認証の原料であること、あるいは漁業改善プロジェクト(FIP)に参加している漁業の漁獲物に限定していく。植物原料に関しては特に環境負荷の大きい大豆とパームに関して、森林破壊由来でない原料をより明確に購買するために調達ポリシーを策定し、達成のための行動計画に沿い、実行していく。
良き市民
社会的責任を果たす良き市民(グッドシチズンシップ)というテーマのもと、ニュートレコに関わるすべての人の権利を尊重してビジネスを行う。
従業員のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進では、性別、文化、民族、国籍、価値観などの多様性を受け入れ共生していくことが組織の成長とイノベーションの原動力であるとし、具体的な数値目標を設定していく。
ニュートレコでは2020年から採用者の3人に1人は女性で、25年までに管理職級の女性を20%に引き上げることが目標だ。またジャパンでは、無意識の偏見(バイアス)といった意識の改善などの取り組みも行っている。
増え続ける世界人口は2050年までに95億人になると推定され、貧困と食糧の安全保障は継続的な問題である。地域の人々が、農業によって極度の貧困から脱却できるよう教育的な取り組みやコミュニティーの改善を支援していく。
[みなと新聞2021年5月17日18時20分配信]
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