事業者向けオークションなどを運営する情報流通支援サービスのオークネット(東京都港区、藤崎慎一郎社長)は養殖魚の情報発信や販促支援を行うサービス「港町のごちそう」をトライアル展開している。産地で魚の基本情報や魅力をカタログに落とし込み発信。販売店はカタログ情報を見て購入する魚を決め、既存流通を利用して仕入れる。販促ツールの提供を受けて売り場をつくることもできる。
主に扱うのはストーリー性のある養殖魚。生産環境や餌などのこだわりは「安定供給が目的の既存の流通では伝えきれない魅力がある」(同社水産事業推進グループ森本MGR)と、消費者まで伝わる情報に落とし込む。魚は珍しい魚の「イベントタイプ」、無投薬を基本とした「健康志向タイプ」、血抜きや締め方に特長がある「通好みタイプ」、環境配慮の「エコタイプ」に分類。タイプ別にすることで販売店が選びやすくなり、消費者には価格の理由が伝わりやすくなるという。
各タイプに対応した販促物を使えば、売り場づくりも簡単にできる。同社は「何を買おうか考えながら売り場を歩くお客に買ってもらえるように」と、魚の情報満載のPOPや動画など複数種を用意。中でもオリジナルのMDシールがバイヤーから人気だという。
関東のスーパーやオーガニックショップ6社が同サービスを利用中。仕入れる魚は2~3尾からと小ロットでも可能のため、地域密着型のスーパーで導入が広がる。同社が仲介するのは鮮魚にとどまらない。魚を扱いたいが下処理できるバックヤードがないといった店舗向けに、東京・豊洲仲卸の協力を得て加工品の陳列を実現する。
同社はリアルのオークション会場を持たずに中古車や花き、中古医療機器などのオークションビジネスを展開しており、「ものを動かさず情報で便利に取引できる流通をつくり続けてきた」(同)。新規事業を考える中で「魚の魅力がわかる人を増やす流通をつくりたい」と、2年前に産地と量販店を情報でつなぐ同サービスを構想し始めたという。「魚を買う人が増え、流通量増加にもつながるのでは」と、情報で水産業界を盛り上げる。
[みなと新聞2021年10月25日 18時20分 配信]
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