【札幌】北海道太平洋沿岸で今秋に発生した赤潮に関して、道立総合研究機構(道総研)水産研究本部は11月30日、沿岸モニタリング調査で検出される有害プランクトンの濃度が11月中旬以降、低下していることなどから「急速に収束に向かっている」との見解を道の対策会議で示した。
今回発生した赤潮の原因プランクトンは低水温に耐性があり、水温が低くても増殖できる可能性がある「カレニア・セリフォルミス」が国内で初めて確認された。4振興局沿岸の約50地点で行っているモニタリング調査で、海水1ミリリットル当たりのプランクトン数は11月15~21日に釧路、十勝、日高で50以下となった。10月下旬から11月上旬には十勝や日高で1万~5000あった。今回の調査で根室は270とやや高かったが、海水を取水した顕微鏡検査で赤潮ではないことを確認した。
道総研の木村稔水産研究本部長は「冬に向かって海水面の冷却が進む時期。冷やされた海水は下層へと対流するため、赤潮プランクトンも鉛直方向に拡散し、光合成の条件が悪くなり、増殖に不利な環境になる。来春までに再増殖する可能性は低い」と説明した。
被害額80億円超 国内過去最大に
道の赤潮は9月下旬に釧路で初めて確認されて以降、十勝、日高、根室の4振興局沿岸に広がり、11月19日時点の被害額はウニや秋サケのへい死など約80億円。国内で過去最大の赤潮被害となった。漁場調査などの結果によっては今後、数年間水揚げへの影響が懸念されている魚種もあり、被害が拡大する可能性もある。発生から2カ月あまりでいったん収束へと向かう見通しとなったが、被害実態の把握やウニなどの死骸が散乱する漁場回復、原因究明や再発防止策はこれからだ。
会議では、道が16漁協の沿岸や沖合域で12月から着手する潜水・水中カメラでの緊急漁場調査、漁協や漁業者の経営対策などについて報告。また、政府が11月26日に閣議決定した国の補正予算で行う15億円の緊急支援事業で、道総研が中心となって赤潮発生メカニズムの解明や発生予察手法の開発、水産生物への毒性の影響調査などを行うことが報告された。
[みなと新聞2021年12月01日 18時20分 配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/
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