みなと新聞

【みなと新聞】漁獲30年まで4割回復へ 基本計画、漁港長計を閣議決定

2022.03.30

政府は25日、5年ぶりの水産基本計画と漁港漁場整備長期計画の更新を閣議決定した。

 〈水産基本計画〉水産基本計画は10年程度を見通して定めおおむね5年に1度ごとに見直すもの。今回は3本柱に①資源管理(不漁の原因究明に向けた科学研究強化、一昨年公表のロードマップに順ずる漁獲管理など。2030年までに20年比で漁獲を40%回復させるなどが目標)②成長産業化(養殖や沖合漁業の大規模効率化、気候変動に対応できる漁船の普及など。30年の養殖生産でブリ74%増、マダイ67%増トンなどの水準を達成する、40年までに漁船の電化・燃料電池化技術を確立するなどが目標)③漁村活性化(観光業による漁村活性化など)を掲げた。食用魚介類の自給率を20年度(概算値)の57%から34年度に94%まで高めるとの目標も掲げた。

TAC魚種で8割カバー 養殖生産100万トン目標

 水産基本計画で資源管理関係では、日本の漁獲減少について「さまざまな原因が考えられる」としつつも、適切な資源管理を行えていれば「減少を防止・緩和できたと考えられるものが多い」と明記。今後、市場や漁業者の協力、デジタル技術を生かして海や漁業のデータを集める▽データを科学的な資源評価に生かす▽23年度までに漁獲可能量(TAC)管理の対象魚種を増やして漁獲量の8割をカバーし、TAC魚種以外も含む資源管理計画を科学ベースの「資源管理協定」に修正していく▽漁業と一貫した遊漁管理を目指していく―などを書き込んだ。

 環境変化についても、資源の分布・回遊の変化など多大な影響を及ぼす可能性が高いとし、気候変動の影響を資源評価に考慮する▽国内外の研究機関と情報共有する▽資源変動や分布・回遊の変化に順応すべく漁船漁業で漁法・魚種の複数化や協業化、漁船の脱炭素化などの構造改革を進める▽サケふ化放流の回帰率改善に向け野生魚の活用研究などの取り組みを進める―方向とした。

 成長産業化に向け、沿岸漁業では、将来を支える人材の定着などを目指した浜プランの改善▽秩序ある遊漁振興▽海面の有効活用に向けた漁業権分布の可視化推進―などを志向。沖合漁業では、TACを漁船別などに割り振ることで漁業経営の安定を図る個別漁獲割当(IQ)制の導入▽IQが順守される中での漁法・魚種の複数化や協業化など複合的漁業への転換、船型・漁法の見直し▽買い手ニーズに合った水揚げ・未利用魚活用―などを図るとした。遠洋漁業は、乗組員確保、省力化、販路確保―などを目指す考えだ。

 養殖では、一昨年策定の「養殖業成長産業化総合戦略」に基づいた戦略的養殖品目の増産数値目標の達成と輸出拡大▽サーモンの国産品シェア拡大▽マーケットイン型養殖への転換▽魚粉に依存しない餌の開発▽人工種苗の生産技術の実用化▽餌代や人件費の削減などに向けた情報通信技術(ICT)の活用▽事業性評価ガイドラインによる経営改善の実証▽陸上養殖の届け出養殖業への位置づけ―などを掲げた。

 漁業種にかかわらず、デジタルの活用に向け、関係省庁と連携しての海上の通信環境整備やデジタル人材の育成▽漁業者の経営などを配慮した上での漁業共済制度のあり方の検討―を行うとした。

 漁村活性化へは、浜プランによる漁業外所得(宿泊費など)確保推進▽漁港施設の再編・整理や民間事業者の誘致など「海業」の環境整備▽複数漁協間の合併や連携▽加工業者への原料確保や中核人材育成、外国人材活用▽流通業者へのICT活用やマーケットインの発想の普及▽違法・無報告・無規制(IUU)漁業の撲滅に向けた水産流通適正化法の対象魚種の定期的検証▽流通企業に対する人権に関する透明性確保の啓発▽消費者への水産エコラベルなどによるPR―などを進める方針を採った。

 新型コロナウイルス対策として、新しい生活様式に合う水産物提供体制の構築▽外国人材の不足に対応した人材確保支援―なども書き込んだ。

 〈漁港漁場整備長期計画〉5年を1期として策定する漁港漁場整備長期計画。今回は水産基本計画と連動し「水産業の成長産業化」「持続可能な漁業生産の確保」「漁村の魅力と所得の向上」を重点課題とした。

 成長産業化では、岸壁延伸や衛生管理機能アップなど、流通拠点漁港の機能強化(流通拠点漁港において総合的な衛生管理体制下で取り扱われる水産物の割合を21年現在の45%からおおむね70%へ向上させることなどが目標)▽種苗生産から加工流通までの一体的な施設整備など養殖生産拠点の形成(生産拠点地域で確保される養殖生産量を現状の90万トン台からおおむね100万トンとすることなどが目標)―を目指す。

 持続可能な生産に向けては、環境の変化に対応した上での藻場干潟造成など漁場生産力強化(5年間でおおむね6・5万トンの水産物増産を漁場整備で挙げることなどが目標)▽大規模地震・津波など災害リスクへの対応強化(流通拠点漁港中、被災後の早期回復体制を備えた港の割合を、21年現在の27%からおおむね70%に引き上げることなどが目標)―を掲げる。

 漁村の魅力・所得を高める取り組みとしては▽漁港施設の再編などを通じた、観光業など「海業」による漁村活性化(5年間でおおむね200万人の都市漁村交流人口を達成することなどが目標)▽多様な人材の活躍―を挙げた。

[みなと新聞2022年3月26日17時50分配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/

モバイルサービスを漁具の一つに

+reC. (プラスレック)がよくわかる
資料を無料でお配りしています

資料ダウンロード

solution image
おすすめ記事