みなと新聞

【みなと新聞】SBプレイヤーズが語る次世代水産業 IT活用で持続可能性に貢献『SBプレイヤーズ特集』

2022.12.15

次世代企業を出資で支援

 漁業従事者の高齢化や後継者不足、生産現場での働き方改革―。現在の日本の水産業が抱える課題は数多い。そのような中、SBプレイヤーズ(SBPL、本社・東京都中央区、藤井宏明社長)では次世代の水産業を担うスタートアップ企業と共創し、テクノロジーを活用した課題解決を図ろうとチャレンジを始めている。SBPLは9月、京都大発の養殖技術スタートアップのリージョナルフィッシュ(本社・京都市、梅川忠典社長)の第三者割当増資を引き受けた。SBPLで水産プロジェクトのリーダーを務める大和田彩果氏とリージョナルフィッシュ梅川社長に、テクノロジーを活用した次世代の水産業について聞いた。(略敬称)

作業省力化など課題解決へ連携

 【水産領域に注目している理由は】
 大和田 当社は「ITで地域社会に活力を」を経営理念に掲げ、地域社会での価値創造を目指した事業の創出・展開に取り組んでいる。事業子会社を通してふるさと納税の一括代行事業(さとふる)や先端施設による農業事業(たねまき)などのサービスを展開し、雇用機会の増加や産業の振興を通じて地域の活性化を目指している。

 特に着目しているのは農業や水産業など日本の食を支える1次産業で、長い年月にわたる努力と工夫に大変敬服している。一方で現在の日本の水産業は、担い手不足や従事者の高齢化など負担がかかり過ぎているとも感じている。当社は今後、情報技術(IT)を活用してこれらの課題に向き合いたい。さまざまな企業と連携し、生産から消費に至るバリューチェーン全体での業務効率化を支援したい。理想としては、私のような女性でも活躍しやすい環境をつくること。日本の水産業がこれまで培ってきたノウハウと、先端技術を掛け合わせることで、実現できることも多いと考える。

 【今回両者が連携に至った背景は】
 大和田 水産業には多くのチャンスと課題があり、自社での取り組みだけでは足りない部分がある。そこで、課題解決に資する技術を持ち、当社と同様のビジョンを描く企業と連携することが大切だと考えた。出資をスタートとし、水産業の課題を一刻も早く解決できるよう、企業・水産事業者さまと連携を強化しながら貢献していきたい。

 このたび出資をしたリージョナルフィッシュは、ゲノム編集で魚の品種改良を高速化させる技術を持つ。同社を支援することで、水産事業者さまの負担を軽減できるお手伝いができると考えた。

 また、同社が進める「地域に合う魚種を開発する」取り組みは、地域活性化や産業の振興を掲げる当社の理念に合致すると感じている。

 梅川 出資を受けて現在、国内最大級の陸上養殖プラント新設の準備を進めている。陸上養殖は従来の養殖に比べて取り扱う魚のサイズが小さく、海上に比べて転落事故のリスクが少ないため、女性や高齢者でも働くことができる。

 また、地域活性化という点では、「京料理にはこのアマダイが合う」など各地域の郷土料理に根差した商品があれば、地域を盛り上げる地魚になるとも考える。そのような未来を実現する上では、バリューチェーン全体をカバーする連携が必要だと考え、出資を受けた。

 【SBPLとタッグを組み魅力とは】
 梅川 SBPLは事業子会社を通じて全国の自治体とネットワークを構築している。そのため、今回の連携を通じてリージョナルフィッシュの取り組みに興味のある自治体へのアプローチも可能になると考える。

 また、SBPLはインターネットを通じたマーケティングノウハウを有する。今後、当社が開発した魚をインターネットで効果的にブランディングして販売する中で、SBPLのITサービスのオペレーションノウハウや強みを武器にできることも魅力的だと感じる。

 さらに、SBPLは出資からシナジー構築までの流れが一気通貫していると感じる。われわれと一緒に夢に向かって伴走してくれるイメージだ。今後はどこかの地域でロールモデルになるような名産品を作りたい。これを最初のスモール・ウィン(小さな成功)とし、その事例を他地域にも横展開していきたい。

 【今後の事業展開やビジョンについて】
 大和田 まずはリージョナルフィッシュや他出資先企業さまとの連携を強めながら、今後も消費者に安定した量・品質・価格で持続的に水産物の提供ができるように、生産―加工―流通―消費といったバリューチェーン全体での効率化を支援していきたい。

 また、環境課題や食料安全保障の問題からも、輸送距離の少ない国内水産物の生産と消費拡大が必要だと思っている。

 当社だけでできることは限られているため、今後はさまざまな企業や自治体との連携を積極的に進めていきたい。これまでの水産業に受け継がれてきた知恵と技術を学び、そこに最新テクノロジーを加えることで水産関係者皆さまの価値創造のお役に立ちたいと考えている。

 企業への出資に当たっては、業種や創業年数といった条件は設けず、水産業の川上から川下まで広く連携を進めたい。これからの水産業を担う事業者さま、新たなチャレンジに取り組んでくれるような地域や関係者さまと連携し、共に地域活性化に向けて挑戦し、水産業をさらに盛り上げていきたい。

[みなと新聞2022年12月13日18時20分配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/

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