みなと新聞

【みなと新聞】米ITコンサル大手が水産参入 養殖魚の寄生虫までAI監視

2023.07.14

 世界で35万人の従業員を抱える米ITコンサル大手コグニザントは6月に新事業グループ「コグニザント・オーシャン」の創設を発表した。水産業ITサービスも想定し「巨大なデータ量を扱えるのが強み」(同社)。特に養殖については、いけす内の魚を個体別で追跡して重量推定や寄生虫のつき方を観察する、水産物の商流全体を把握しトレーサビリティーを確保するなどのノウハウを持ち、日本国内でも同事業分野の拡大を狙う。

巨大データで商流可視化も

 同グループは持続可能な水産業をつくる「ブルーフード」の他、温室効果ガス排出量の削減、気候変動への影響緩和を目指す「ブルーカーボン」、洋上風力発電、潮汐エネルギー、海洋波エネルギーなどを振興する「ブルーエネルギー」、効率的かつ持続可能な海上輸送の形を目指す「ブルートランスポート」から成る。

 同グループでは事業の立ち上げに際し、グーグルの親会社アルファベットと連携。両者は過去の連携において、ノルウェーのサーモン養殖場で、養殖いけすの中の数千尾の魚群を水中カメラを用い1尾ずつ動画で監視できる技術を開発・実用化した実績を持つ。

 ノルウェーのシステムは機械学習などに900テラバイトという膨大なデータ量を取り扱うことで、人工知能(AI)で1尾ごとの行動を追跡でき、「いけす内の魚体重を98%の精度で推定可能」(コグニザント)。魚体についたシラミの量や雌雄も判別。水温や酸素濃度などの環境データと合わせ、魚の摂餌ペースなど行動分析もできる。魚をいけすから取り出さなくても観察できて養殖魚の死亡率低減・コスト低減につながる上、餌の無駄遣いが減って環境負荷も下げやすくなる。

 巨大なデータ量を扱えるため、魚のロットそれぞれについて、養殖場から加工場、小売などの各流通段階へ運ばれたタイミングや各所での温度管理などを記録・確認可能。ロットごとの魚体の健康性や、流通経路の健全性などを証明でき、付加価値化も図れる。

 コグニザントジャパンは、こうしたノウハウを日本国内で大規模養殖を中心にPRしたい考え。また「特定の問題解決策を売るというより、顧客のニーズに合わせたサービスが可能」と同社。養殖に限らず、水産に役立つサービスの展開に意欲を示している。

[みなと新聞2023年7月13日18時20分配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/

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