みなと新聞

【みなと新聞】ニチモウ 環境に優しい漁網実用化へ リサイクルや生分解性追求『SDGs特集/各企業の取り込み』

2023.12.14

 大手水産商社のニチモウ(東京都品川区、松本和明社長)は2023年3月期からスタートした中期経営計画の中でサステナブル(持続可能な)経営に軸足を置く。その柱として①陸上養殖の事業化②環境に配慮した漁網の実用化③水産物加工の安定供給体制構築を重点的に推進する。

 環境に優しい漁網実用化の一環として、同社グループで養殖関連事業を手掛けるニチモウマリカルチャー(福岡市)と配合飼料メーカーの日本農産工業(横浜市)はこのほど、共同でポリエチレン製リサイクル漁網を用いた養殖いけすを開発。岩手県久慈市と宮城県女川町に同製品を導入し、両産地では既にギンザケ生産が進められている。漁網の水平リサイクルによって製造した漁網を養殖に使うのは初という。リサイクル前後で用途を変えず廃棄物を再活用できるため、二酸化炭素(CO2)排出量削減や資源節約が期待できる。

 ニチモウは中核事業の海洋事業ではリサイクル漁網を用いた養殖いけすの販売とノウハウ提供を実施。一方、機械・資材事業では環境配慮型資材を供給し、さらには食品事業で環境に配慮したいけすで育てた付加価値の高いギンザケを流通することで、事業間を横断した一貫体制で養殖業をサポートし、自然に優しい水産業を推し進めると意欲をみせる。

 同社はその他の環境に配慮した漁網の一例として、世界初という生分解性樹脂のポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を主原料とした海洋資材「生分解性(バイオマス)刺網」を開発。同網は操業中に荒天などで流出した際に海に着底後、加水分解による物性低下によりゴーストフィッシング(幽霊漁業)抑制が期待される。

 同網は同社グループの北海道ニチモウ(函館市)、横山製網(岡山県瀬戸内市)、ミヤコ化学(東京都千代田区)が共同開発した。ゴーストフィッシングは流出した漁具が海中に漂うことで魚を捕まえる現象。魚の多くは逃げ出せず死んでしまうため、水産資源や生態系保全の観点から国際的な問題となっている。

 同グループなどは11月中旬に北海道のスケソウダラ漁で同網の実操業試験を実施。現段階の検証結果では漁獲効率は従来のナイロン製と差はあまりないだけでなく、魚を外しやすいという特性があり、担い手の高齢化が進む漁業において省人・省力化にも貢献する結果となった。今後は漁獲メカニズム解明や流出時の物性変化について検証する。

 なお、同社によると、ポリ乳酸(PLA)を用いたバイオマス漁網・ロープは海藻の種付き・生育スピードに優位性があり、研究では従来品(ポリプロピレン製)と比べて約4倍の速さの生育速度を確認。今後は藻場造成基質として提供し、実証実験を進めるとともに、商材化を進めて、中長期的にはブルーカーボン事業への参画を狙う。

 ▼ニチモウ(株)=(電)03・3458・3020

[みなと新聞2023年12月13日18時20分配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/

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