みなと新聞

【みなと新聞】海業支援「適切なサイズで」 自民会合 漁協から小規模補助訴え

2024.04.04

 自民党の水産総合調査会は3月28日に党本部とオンラインで、漁港や漁村の地域資源を観光業などに活用する海業の勉強会(小泉進次郎座長)を開いた。海業の先行事例を持つ北海道と高知県の漁協が漁業体験などの事業を発表した。比較的規模が小さい高知県漁協上ノ加江支所(中土佐町)では、事業が必要とする額が補助金の下限に達しないため申請自体できないことがあるとし、大高明支所長が適切なサイズを持った支援制度の必要性を訴えた。

一日漁師体験が個人所得向上に

 ■ 高知県漁協上ノ加江支所 ■

 漁獲の低迷や高齢化などの危機感から、高知県漁協上ノ加江支所では2003年ごろから、「一日漁師になれる体験」をコンセプトに約3時間の漁業体験を提供している。07年に漁業体験施設を建設し団体客の受け入れが可能になり、以降、学校向けの学習プランを作成するなど新型コロナウイルス感染症の拡大前まで集客を1800人程度まで増やした。

 コロナ禍以降も大人の参加客は低迷が続いているが、個人所得では年間150万円程度のプラスが出ているとし、特に出漁日数の減った高齢の漁業者に貢献できていると大高支所長が説明した。

 課題として、「浜の活力再生・成長促進交付金は下限額が大きすぎて上ノ加江支所が必要とする規模では申請が不可能」「ハードに対する補助はあっても宣伝や専門家派遣のソフト事業が少ない」など、小規模の漁協などで使いやすい補助制度の必要性を挙げた。

 補助のサイズに対する要望を受け水産庁漁港漁場整備部の田中郁也部長は、既存施設の有効活用など小規模な事例の積み重ねが海業には大切とし、支援策を検討すると応えた。

監視船で野鳥観察クルーズ

 ■ 北海道・歯舞漁協 ■

 歯舞漁協(北海道根室市、小倉啓一組合長)の中村直樹専務理事は、道内の魅力ある漁業地域づくりに取り組む国交省北海道開発局の「北海道マリンビジョン」に基づく、04年ごろからの魚家民泊など「都市との漁村交流」活動を紹介した。

 漁協所有の漁業監視船を利用した、北方領土を巡る野鳥観察のクルーズツアーは23年に約200人を集客し、うち100人程度が外国人観光客だった。

 水産学習や漁業体験を含む渚泊の実績も19年に810人を受け入れるなど増加傾向。新型コロナの影響で21年には受け入れ0人となったが、農水省の農山漁村振興交付金(農泊推進対策事業)の助成金でパンフレットを作成するなどの誘致活動で再び集客を増やしている。 

 大学と提携した学生の宿泊受け入れでは、現地調査で単位を取得できる仕組みをつくり、安定的な集客を図る試みを進めている。

 当日はこの他、水産庁が漁業体験について、密漁にあたる魚種や水中銃の使用不可のルール、外国人の参加が抵触する可能性のある関連法などを説明した。海業の振興に合わせ、法令の解釈を整理し、漁業者や行政関係者らに伝える方針とした。

[みなと新聞2024年4月2日18時20分配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/

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