NTTコミュニケーションズ(NTTコム、東京都千代田区、小島克重社長)は高級魚種の陸上養殖システムを提供する新会社「NTTアクア」を新設し、2日事業開始した。社長にはNTTコムのソリューションコンサルティング部長などを務めた山本圭一氏が就任した。新会社の資本金は9500万円で、NTTコムが100%出資する。
NTTコムの渡辺聡ソリューション&マーケティング本部ソリューションコンサルティング部長は「2030年までに数百億円規模の累計売上高を目指す」と意気込む。今後、NTT子会社のNTTグリーン&フードなどグループ内の陸上養殖事業との連携も検討する。
NTTコムは23年から沖縄で「アカジンミーバイ」と呼ばれる高級魚、スジアラの陸上養殖技術を持つ紅仁(あかじん、沖縄県大宜味村、後藤徳彦社長)と共同研究を進めてきた。紅仁が保有する養殖技術とろ過技術に、NTTコムのICT(情報通信技術)を組み合わせた陸上養殖システムを提供する。
NTTアクアのシステムの最大の特長は「成育水をバクテリアによるろ過を行わず、科学的手法によるろ過システムのため、100トンの水が畳1畳分程度のスペースでろ過できる点」と山本社長は強調する。システム導入費用は「国内の従来のRAS(閉鎖循環式陸上養殖)システムよりやや安い価格帯。また、生物ろ過槽がないため、ランニングコストもメリットがある」と山本社長。
水100トンを最小ロットとしてシステムを提供する。成育水は海水の取水を基本に、地下海水も視野に入れる。水槽内の包容密度は魚種によるが従来の平均とされる5%よりやや高い8%程度を見込む。
NTTコムは海面養殖向けに水温や塩分濃度などを計測するセンサーと計測データを送受信する通信機能を搭載した「ICTブイ」で養殖業のスマート化を進める実績を持ち、陸上養殖用にシステムを一新した。水槽内の溶存酸素量、水温、塩分濃度、pH、アンモニア、硝酸、亜硝酸などのデータを接続するデバイスでどこでもリアルタイムに水槽内を可視化する。山本社長は「紅仁と一緒に養殖しながら現場で必要なデータ、見やすいUI(ユーザーインターフェース)にこだわった」と力を込める。
NTTアクアは現在、沖縄でスジアラ、キジハタ、タマカイのハタ類3種の養殖技術を確立しており、今後マサバなど魚種拡大を進める。山本社長は「陸上養殖は魚種の選定が重要だ。スジアラのように各地で需要はあるが獲れなくなった収益性の高い魚種の養殖を目指す。各自治体の水産試験場が放流用に育種する種苗を基に陸上養殖も可能では。将来的には種苗生産、販売したい」と構想を話す。
[みなと新聞2024年12月2日18時10分配信]
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