【札幌】北海道ほたて漁業振興協会(会長・高桑康文常呂漁協組合長)と北海道漁連(会長・阿部国雄福島吉岡漁協組合長)は5日、道内全域でホタテガイの採苗不振が発生している問題で、稚貝の安定生産に向け、道や道議会に採苗不振の原因究明、採苗技術の高度化などを要請した。
道のホタテ生産高は2023年度で40万6000トン、930億円と、漁業全体の約3分の1を占め、道の漁業や水産加工業などの関連産業にとって重要な基幹魚種となっている。
ホタテの種苗生産は天然の環境のもと、春に親貝から生まれた浮遊幼生(ラーバ)を採苗器に付着させて採取した後、夏から秋に採苗器で育った稚貝を選別、育成かごに移す分散作業(仮分散、本分散)などを行いながら翌年春まで育て、放流用や養殖用として用いられている。
これまで局所的な採苗不振はあったものの、「日本海もオホーツク海も噴火湾も採苗不振というのは異例で明確な原因は分かっていない」(道立総合研究機構網走水産試験場)。産地では2~5年後の水揚げへの影響、さらに次年度以降も採苗不振発生の可能性が懸念されている。
道ほたて振興協と道漁連は要請で「海洋環境の変化に負けない種苗生産体制の構築が喫緊の課題となっている一方、道総研水産試験場や道の水産技術普及指導所などの調査研究機関は統廃合や人員削減が進み、新たな調査に対して人員を配置することが困難な状況になっている」と指摘。今後も稚貝を安定的に生産していくため、調査研究体制の充実とともに①稚貝の採苗不振の原因究明②海洋環境の変化などを踏まえた採苗技術の高度化③ラーバの出現状況などの調査・情報提供の充実強化―を求めた。
岡嶋秀典・道水産林務部長は「要望の趣旨を踏まえ、現地の状況をきめ細かに把握しながら、しっかりと対応を進めていく。皆さまと一丸となり、稚貝生産の安定化に向けた取り組みを進めていきたい」と力を込めた。また、冨原亮道議会議長も「今年のような異常事態が起きたときにできる対応の研究を進められるように後押ししたい」と応じた。
意見交換では、高野勇一・道ほたて振興協副会長(長万部漁協組合長)が青森県・陸奥湾で産卵時期の親貝を多めに残し種苗確保につながった例を挙げ、「噴火湾全体で来年、陸奥のやり方をまねしてみようと話している」と披露。「残すことには漁業者もリスクがある」とし、陸奥では県が親貝対策に資金支援を行っていることを紹介した。
[みなと新聞2024年12月9日18時10分配信]
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