JF全漁連(坂本雅信会長)は7日、東京都内で年頭会見を開き、今年、海洋環境の変化に合わせた漁業経営を進めていく姿勢を鮮明にした。その時々で獲れる魚種に合わせつつ訪日客などもにらんだ販売促進、有機漁礁を用いた藻場造成はじめ環境回復、人手不足でも現場を回すための電子機器導入をはじめスマート化、各種優良事例の横展開などを課題として列挙。漁協系統内部での情報連携を通じて対策を急ぐとした。
坂本氏は冒頭、地元銚子(千葉)のサバの不漁などを例に「海洋環境の激変が影響したかと思う」とコメント。厳格な漁獲可能量(TAC)管理下にあったクロマグロやマイワシの「資源が回復していると漁業者も実感している」と認めつつ、「TACだけで資源が回復するものではない。クロマグロのように小型魚を獲らない、国同士で協力するなどが必要」「環境変化は一朝一夕には変わらない。藻場干潟を回復しながら、一方で魚の価値を上げていかなければ」と先を見据えた。
内田珠一専務は魚の付加価値化へ、来年度、インフルエンサーを活用した宣伝や、訪日客に漁村観光について伝えるイベントを進める戦略を発表。昨年、大手小売イオンで温暖化に伴い増えたとされる未利用魚アイゴや復興を目指す石川県の水産物などをPRしたことを例に、イベントを単発で終わらせず、後の販促につなげたいとした。
三浦秀樹常務は環境変化に「漁業者自ら、できることがある」と強調。漁船の二酸化炭素排出を減らす工夫に加え、藻場や干潟の回復、海底耕うん、植樹、漁礁設置など回復策を必要視した。
過去の藻場干潟回復事業には、効果が十分でないという批判もある。三浦常務は「今まで(藻場造成などに)よく使われてきたコンクリート漁礁で、本当に魚が増えているのか」と振り返り、貝殻などを用いた有機漁礁を漁協系統の購買事業を通じ普及する構想を示した。漁礁により、栽培漁業で放流する稚魚の生残率向上も狙う。
石川和彦常務は漁協系統の購買事業について、従来、燃油中心に売り上げ向上を目指してきたが、環境配慮資材や海づくりに向けていくよう動いていると語った。
三浦常務は、漁業者が環境回復に必要な知見を得られるよう「(漁協などが地元漁業者の収入10%向上を目指して方策をつくる)浜の活力再生プランを通じた異業種連携、(青年漁業者を束ねる)漁青連で藻場干潟の学習会など進めていく。現場に合う方法を選べるようサポートする」と展望。「環境変化は漁業者のみならず国民全体の問題。原因究明を含めやっていきたい」とした。
内田専務も海洋環境保全や海業の推進、漁業のスマート化について「第三者や科学は拒むものではなく、あらゆる機会を活用したい」という姿勢。特にスマート化による業務効率向上は、人手不足が避けられない現状では不可欠だとみて普及に積極的な姿勢をみせた。
[みなと新聞2025年1月7日18時10分配信]
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