JF全漁連の坂本雅信会長らは19日の通常総会後に東京都内で記者会見し、海洋環境など漁業を取り巻く情勢の変化により素早く対応していく姿勢を強調した。漁業者と科学者の連携、漁業者同士の協業や法人化などを通じて必要なデータ類を集め、環境に対応した生産体制を模索する。
坂本会長は、会見で会長就任後の3年間を回想。福島第1原発の処理水放出に伴う中国などの日本産水産物規制、藻場・干潟の衰退など海洋環境の激変、人口減少と漁業の人材不足などの課題が顕在化してきたと振り返った。
漁協系統が今年度から5年間掲げるスローガン「海洋環境の激変に立ち向かうJF自己改革の断行」に言及。「これだけ海洋環境が激変している。また、漁業と日本を取り巻く環境が変わっていくスピードが速くなっている」とし、「5年と言わず、スピード感を持って改革に取り組んでいかなければいけない」と危機感をあらわにした。
総会では特別決議を採択。「資源と環境を同時に回復させる『環境回復型漁業』の推進や、日本の漁業が持つポテンシャルを最大限に活用した取組を実践していく」としつつ、政府に「異次元の水産予算の拡充・強化を強く求める」という内容だった。
会見で、予算への具体的な要望を問われた三浦秀樹常務は、最近7年間3000億円強で推移した水産予算について、「これでいいのかと。海洋環境が激変している中で見直しが必要。調査にも相当な予算がかかる。これからどういうことが起こるか、少しでも早く知ることが必要」とコメントした。海洋環境の実情を把握し、高水温域を避けて深場に養殖いけすを配置するなど生産体制を工夫したり、栄養塩供給の調整や有機漁礁の活用、自然界に放流する人工種苗の生存率向上、二酸化炭素削減など、環境修復策に取り組んだりする必要があると展望した。
総会で承認した今年度事業計画では、海洋環境のデータ収集・分析に自ら取り組むこと、沿岸漁業の法人化・協業化やスマート化による経営強化を図ることを明記した。
この意図については「協業化や法人化、スマート化でデータを蓄積し、効率よく養殖や漁業をしていこうと思っている。人手不足の中でそういうことをしないと生き残れない。大きなデータを取るには、1人だとできないことがある」(坂本会長)。「日本財団と東京大、全漁連で行っている環境変化モニタリングプロジェクトを今年度、さらに進化させる。変化の実情を明らかにして、浜ごとにどう行動したらよいか考えていく」(三浦常務)と説明した。
[みなと新聞2025年6月20日17時50分配信]
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