みなと新聞

【みなと新聞】三倍体カキ、小ぶりも身入り満点 清水水産の「豊前一粒かき」 北九州

2025.10.07

オイスターバーで人気

 【北九州】夏でもおいしい生のマガキを全国へ産直-。清水水産(北九州市、清水利彦代表)が生産する身入りの良い三倍体カキは、東京をはじめ全国の主要都市で営業するオイスターバーやカキ料理店へ定期的に出荷が続けられている。9月下旬、清水氏がつくるカキの生産現場へ取材した。

 清水水産は、一昨年前から三倍体カキの試験操業を経て、昨年から本格的な生産を開始した。豊前海北部漁協恒見支店が生産するのが、曽根干潟沖合で養殖するブランドカキの「豊前一粒かき」だ。漁協組合員の清水さんは、11台の養殖いかだを管理し、今年はそのうち2台で三倍体カキを養殖する。三倍体カキは、稚貝をかごに入れて殻のカップが深く、身入り良く育成させるシングルシード方式でつくる。1つのかごでは70粒ほどの出荷サイズのカキができる。主にオイスターバー向けに生産しており、店からは60~80グラムのサイズが好まれる。

 三倍体カキは、一般の二倍体カキが出荷を迎える冬から春を過ぎても成長が進むため、夏と秋にも水揚げができる。過去には、カキがシーズンオフになると大分県の県境まで航海し、刺網漁でシタビラメなどを獲って収入の足しにしていたという清水さん。この裏作を必要としないカキ専業の道が、三倍体カキを生産する取り組みだ。カキをかごに入れて育成するシングルシード方式での養殖は、波の影響を強く受ける。波風が強くかごが大きく揺れれば、カキの殻は大きくなり身は太くなる。だが、揺らし続ける状態だと成長は抑制されてしまう。そのバランスは、いかだにつるしたかごの水深を調整するなど工夫して、納得のいくカキの仕上がりを日々模索している。

 つくったカキの評判は上々で、東京を中心に大阪、名古屋、福岡などのオイスターバーなどへ定期的に出荷している。カキ料理を売りにする創業14年目の居酒屋「オイスター酒場さくらの」(東京都世田谷区)は、前山隆弘、友理さん夫婦が二人三脚で切り盛りする。全国から自分たちの目にかなったカキを仕入れており、主に力を入れるのが九州産。清水水産の育てるカキは昨年から仕入れを開始した。前山さんは「身ののりも良く、今最も注目しているカキ」と一押しだ。三倍体カキは、夏のマガキとして生食で提供している。

 毎日、カキの様子を見るため海へ船を出すという清水さんは、カキの管理に余念がない。福岡県水産海洋技術センター豊前海研究所が豊前海に設置した観測システムなどで水温、塩分濃度、クロロフィルの数値を確認し、成育の指標に役立てている。今年盆明けの集中豪雨でカキがへい死した時には、海面のごく浅い表層で塩分濃度の急低下が認められ、へい死もあったという。この反省を教訓に、今後は大雨の前兆がある際には対策を立てる計画だ。

 清水さんのカキ養殖は、年ごとに種の産地を増減させたり、いかだにつるす粒数を変えるなど養殖環境は改善を繰り返している。今年からは、二倍体用のいかだ1台を岡山産の種苗でつくる試みを始めた。これを含む瀬戸内海産の種由来のカキ生産が7割、宮城産の種でつくるカキは3割の比率で生産中だ。

 清水さんは「カキは生産が成功しても失敗しても収獲がある」と笑う。それでも自分が計算した通りにカキがうまく成長した時は「よし!」という気持ちになる。日々変わる海を理解しようと努め、自身も変化を続ける清水さん。これからも豊前海のカキ養殖をけん引していくだろう。

[みなと新聞2025年10月3日17時50分配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/

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