タイムリーな情報支援生かす

高知県宿毛湾でブリとマダイ養殖を営む荒木水産(高知県宿毛市、荒木俊慶代表取締役)は、高水温に対応した持続的な生産・出荷体制の構築を進めている。養魚へのストレス軽減を図るため、養殖密度や出荷回数を見直し、給餌管理の人工知能(AI)化を導入するなど、生残率の向上と安定生産に取り組む。また、長年の飼料供給パートナーとして信頼を寄せるスクレッティング(福岡市、朴基顕社長)に対しては、近年の環境変化に適応する飼料開発への期待を寄せている。
■ 養殖と加工事業一貫
荒木水産は、加工事業を手掛ける勇進(荒木俊慶代表取締役)との2社体制で、ラウンドやフィレー出荷はもとより、自社加工した消費者向けのブリしゃぶセットなどを販売する。今年はジャパン・インターナショナル・シーフードショーにも出展し、「荒木さん家のブリ」のブランドを広く売り込んだ。
持続可能な事業体制の構築に向けて、AI搭載の自動給餌機(マダイ用)の導入や、いけす2基同時給餌が可能にする給餌作業船の改良を進めている。
さらに、勇進の加工場にはガッティングマシーン(内臓除去機)を新設し、12月から稼働する見込み。荒木社長は「人手不足は今後も大きな課題。作業時間の短縮など省力・効率化への投資を続けていく。人手不足と気候変動の双方に対応しながら、安定生産を目指す」と話す。

■ 高水温リスクへの挑戦
温暖で潮通しの良い宿毛湾は、養殖に適した環境を有する。ブリ養殖に関しては古くから成長、歩留まりともに国内トップ級の優良産地として知られる。ただ、ここ数年は夏場の高水温の影響で給餌が行えず、従来に比べて成長が遅れることや、急激な温度上昇が引き金となるへい死被害が生じている。
荒木水産でも昨年夏、港内の出荷用いけすに移送した養殖ブリ2700尾が全滅する被害があった。港内は浅く、表層温度は瞬間的に32度に達したという。こうした経験を踏まえ、同社では薄飼いや移送回数の削減など魚へのストレスを減らし、今期は出荷対象となる2年魚の夏場のへい死が大幅に減少した。「地球温暖化が進む中で、今後も環境の変化に柔軟に対応していく必要がある」と荒木社長は強調する。
環境変化への対応に関しては、新たな飼料や人工種苗の開発に期待を寄せる。スクレッティングはサケ養殖の飼料開発で培ったノウハウを応用して、養殖の安定した生産に寄与する機能性飼料の開発に取り組んでいる。荒木水産においても今夏、短期的な給餌試験を実施し、ブリの摂餌行動などを確認した。荒木社長は「大変心強い。今後の展開に期待している」と語った。
■ スクレッティングとのパートナーシップ
単なる製品提供にとどまらず、「現場の課題や市場動向など、有益な情報をタイムリーに提供してくれることがありがたい」と荒木社長は話す。スクレッティングは体測による現場確認や専門的なアドバイスを通じ、持続的な成長と安定生産を力強く支えている。さらに環境変化に対応した飼料開発など現場のニーズに応じた新しい提案も行っている。今後も変化する環境や多様な課題に対して、ともに歩み、よりよい未来を築いていくパートナーとしての役割を果たしていく。
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スクレッティングの親会社のニュートレコは、スイスに設立した研究拠点「Garden of the Future(未来の庭)」で、植物由来成分を活用した機能性飼料「フィトコンプレックス」の開発を進める。植物の代謝物を応用し、魚類や家畜の腸内環境の健康維持や成長をサポートすることを念頭においた技術で、AIによる植物選定栽培から抽出・製品化まで一貫して行い、抗生物質削減や環境負荷低減に貢献する「次世代機能性飼料」として注目を集める。
[みなと新聞2025年11月13日17時50分配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/
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