みなと新聞

【みなと新聞】東北のサーモン「戦国時代」 販路開拓が加速 新局面へ『東北サーモン特集』

2026.06.02

青森、岩手で生産拡大
宮城は平年並み1.5万トン計画

 東北でサーモン養殖の拡大が進んでいる。2011年3月の東日本大震災以降、三陸では秋サケやサンマといった従来の主要水揚げ魚種の漁獲が振るわず、各浜でご当地サーモンの試験養殖が広がった。特に主要産地の宮城と岩手、青森の3県は大手水産企業の参入や地元事業者の取り組みが功を奏し、本格事業化に向けてブランド化や生産規模拡大が進展。販路拡大の熱がますます高まっている。この特集号では東北の各主要産地に焦点を当て、サーモン養殖を取り巻く現状や展望、注目ブランドを紹介する。

 「有力ブランドが各浜で生まれ、マーケットを競い合っている。まるで戦国時代だ」。ある市場関係者は東北のサーモン養殖を取り巻く現状をそう言い表す。国内屈指のサーモン産地・東北では近年、多くの事業者が試験養殖を終え、事業化の動きを加速。新たな局面を迎えている。

 東北でサーモン養殖が普及したのは2011年3月に発生した東日本大震災以降。海洋環境の変化で秋サケやサンマなど従来の主要漁獲物の量がまとまらず、原料不足が深刻化した。浜では「育てる漁業」導入に向けた機運が高まり地元の漁協や企業、県外の大手水産企業が相次いで試験養殖に乗り出した。

 当初はトライアルで生産したごく少量が地元の量販店や飲食店を中心に出回ったが、20年前後に状況が変化。各産地の事業者が本格的な増産に踏み切り、安定供給の目安となる年間約200トンの生産体制を整えた。現在全国規模で拡販を図る動きが加速し、産地間競争が熱を帯びている。

 ギンザケやトラウト、サクラマスなど多品種のサーモンが水揚げされる岩手は25年、生産量3000トンを達成。県担当者によると、今期は4000トンの大台に達する見通しといい、一部産地ではいけすの増設に関する話が持ち上がる。県も地元サーモンを統一的にPRする施策を計画。今後もさらなる盛り上がりが期待される。

 青森では、トラウトの欧州型大規模養殖を展開するオカムラ食品工業グループの生産実績が3476トンと事業開始数年で国内有数の生産量に成長。今後も区画漁業権取得や中間育成場の整備など足元から生産体制を強化し、国内のみならず海外輸出への活用も図る。同社は30年までに国内生産量を1万2000トンに引き上げたい考えだ。

 震災前からギンザケ養殖に取り組み、今や国内トップの生産量を誇る宮城は25年期、前期比18%増の1万5300トンを生産した。水温上昇が比較的緩やかだったため大型魚の出荷が増え、全体量をけん引した。今期も1万5000トンの計画生産量を掲げており、JFみやぎ担当者は「上積みも十分狙える」と意気込みをみせる。

 サーモン養殖の盛り上がりは既存の事業者だけにとどまらない。地元の水産加工メーカーや他業種も新規参入を模索している。人手不足に悩む漁協側は漁場の利用促進や組合加入条件の緩和で、水揚量の維持を図る動きがある。行政や地方の金融機関もこの流れに関心が強く、支援制度やサービスの拡充で後押しを図る。東北では今後もさらに新たなご当地サーモンが誕生する可能性が高い。

 一方で、発眼卵や中間種苗の確保など海面養殖に至るまでの供給体制は依然として不安定な側面が大きい。特に今期は山間部の中間育成場で高水温によりギンザケ稚魚の成長が振るわず、小型主体で出回ったという経緯がある。サーモン養殖が持続的に発展するためには種卵、種苗の段階から成長産業化を推し進める必要がある。

[みなと新聞2026年5月25日17時50分配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/

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