みなと新聞

【みなと新聞】岩手秋サケ「強い稚魚」開発へ 県、回帰率向上に高タンパク飼料試験

2023.01.24

 【岩手】岩手県は、放流するサケ稚魚の大型化を図る新たな技術開発に乗り出す。降海後の生存率を高めるため、高タンパクの飼料を使い「強い稚魚」を生産する。2011年の東日本大震災以降、秋サケの漁獲量が大幅に減少する中、親魚の回帰率を引き上げ、地元漁業者の所得向上につなげる狙いだ。

 稚魚の安定供給を支援する県さけ・ます増殖協会の計画に基づき、県内各地区の地理的特性に合わせた放流体制を整える取り組みの一環。久慈市や洋野町など8市町村を管区とする県北広域振興局が「さけ稚魚強靭(きょうじん)化技術開発」と銘打ち、今春から実証試験を始める。効果性を確認できれば、管内4カ所のふ化場に新飼料の導入を進める。

 サケの成長は飼育水温によって影響を受ける。冬になると平均5度を下回る県北地域のふ化場においては、11月後半から12月に採った卵は成長が遅く、翌年春の放流までに十分なサイズに育ちきらない現状がある。

 そこで、一般的なサケ用飼料に代わり、アユやマダイ養殖に使われる市販の高タンパク飼料を与え、冬にふ化した場合も1尾1・5グラム以上の稚魚を供給できる体制構築を目指す。実証試験では今年3月末~5月に放流する稚魚を対象に、与える飼料を変えて対照実験を行い、放流段階でサイズや遊泳力にどの程度差が出るかを調査する。

 将来的には事業化を目指すが、課題となるのは高タンパク飼料の購入に要するコスト。この飼料は一般的に高単価魚種への投与を想定し、価格は1袋(20キロ)当たり1万円と従来比1・8倍高くなるため「事業化に向けては経費の確保も合わせて考える必要がある」と(同局)という。

 県水産技術センターによると、各シーズン(9月~翌年2月)の秋サケ回帰尾数は1996年度をピークに減少。2019年度以降は最低水準で推移しており、震災前の平均(06~10年度)と比べると19年度は91%減の76万尾、20年度は93%減の59万尾、21年度は98%減の14万尾と低迷が続いている。

 同局担当者は「秋サケは岩手水産業を支える主要魚種。資源の早期回復に向け、できることを考えていきたい」と資源回復への思いを話す。

[みなと新聞2023年1月23日18時20分配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/

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