出典:水産研究・教育機構
気候変動対策で海の藻場や干潟が二酸化炭素(CO2)を貯留する吸収源となる新たな吸収源「ブルーカーボン」に注目が高まっている。国連が2009年に定義付けると一気に脚光を浴びた。国内ではブルーカーボンクレジット取引が始まっている。これまで国内の漁業者が取り組んできた藻場・干潟造成が企業活動と連携することで“新産業”となる大きな可能性を持つ。本ブルーカーボンの連載では概要を解説し、各浜で展開する主要な事業を紹介する。
海藻(うみも)や海草(うみくさ)がCO2を吸収し貯留する生態系をブルーカーボン生態系と呼ぶ。09年10月に国連環境計画(UNEP)報告書が藻場などの海洋生態系が取り込んだ炭素を「ブルーカーボン」と命名、新たな吸収源として定義付け、注目が集まった。
世界のブルーカーボンではマングローブ林が主流の中、日本は海藻や海草が群生する藻場や干潟などの塩性湿地を対象としているため、日本のブルーカーボンの取り組みは世界の先を行く。
ブルーカーボン生態系はCO2吸収源としての機能だけでなく、古くから“魚のゆりかご”と呼ばれるように魚の産卵場として漁業者は藻場や干潟の造成、保全も行ってきた。水産庁の水産多面的機能発揮対策では全国で約700の漁業者グループが活動する。
ジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE、桑江朝比呂理事長)が国内初のブルーカーボンの定量的評価と資金メカニズム「Jブルークレジット」を創設し20年度から発行、クレジット取引を開始。漁業者と共に企業が各地のクレジット事業に参画する他、取得に注目が集まる。
政府もブルーカーボンの取り組みを推進する。23年1月に関係省庁の国交省、環境省、水産庁が連携し「ブルーカーボン関連省庁連絡会議」が発足。同12月上旬にアラブ首長国連邦のドバイで開催された国連気候変動対策会議(COP28)で日本政府がブルーカーボンを紹介した。環境省は24年度にも初めてブルーカーボンのCO2吸収量を算出し、国連に報告を予定する。水産庁は12月に藻場・干潟ビジョンを改訂。水産研究・教育機構は海草と海藻の藻場を対象としたCO2貯留量の算定方法のガイドブックを作成した。
各社の技術を生かした大企業の参画も相次ぐ。日本製鉄、出光興産、Jパワーなどが事業化を進める他、ENEOSは海上・港湾・航空技術研究所港湾空港技術研究所(PARI)、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、東京大らと連携し100万トン超の大規模なブルーカーボン創出の検討に着手した。
JBEの桑江理事長は「日本が持つ海中のセンシングや通信技術など技術を生かし、ブルーカーボン分野で先端技術を構築すれば日本から世界に発信する新たな産業になりうる。日本の海で5000万トンのCO2吸収も夢ではない」と期待を込める。
藻場造成を行うブルーカーボン事業の進展には企業と漁業者との連携、協業が必須だ。ブルーカーボン事業は日本の海から未来を変える新産業になる大きな潜在力を持つ。本紙は進展を注視しながら、連載で個別事例を紹介する。
出典:水産研究・教育機構
[みなと新聞2024年1月24日18時20分配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/
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