みなと新聞

【みなと新聞】住商と岩手3漁協ら、ウニ漁の増殖溝で藻場造成 クレジット国内最大量【漁業・養殖】ブルーカーボン〈2〉

2024.02.16

出典:水産研究・教育機構

 気候変動対策で海の藻場や干潟が二酸化炭素(CO2)を貯留する吸収源となる新たな吸収源「ブルーカーボン」に注目が高まっている。国連が2009年に定義付けると一気に脚光を浴びた。国内ではブルーカーボンクレジット取引が始まっている。これまで国内の漁業者が取り組んできた藻場・干潟造成が企業活動と連携することで“新産業”となる大きな可能性を持つ。本連載では国内の主要な事例を紹介していく。

 岩手県の東北端に位置する洋野町では約50年前から約20キロの海岸線に沿った岩盤に「増殖溝」を掘り、ウニやアワビ漁に利用してきた。22年11月、同町の増殖溝を活用した藻場の創出活動がジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE、桑江朝比呂理事長)の「Jブルークレジット®」認証を取得した。CO2吸収量は国内最大の3106・5トンで、クレジット認証には住友商事(東京都千代田区)と洋野町、同町内の種市漁協、洋野町漁協、小子内浜漁協の3漁協が連携した。クレジット販売で得た資金は増殖溝の整備に活用する予定。

 洋野町漁協は「増殖溝は元来、ウニを育てるために整備してきたもので、当初はブルーカーボンの事業につながるとは思ってもみなかった」と振り返る。その上で「ブルーカーボンは日本だけでなく世界でも注目が高い。藻場を造成しながら地球環境に貢献できるのはうれしい」と笑顔で話す。

 同町では遠浅の環境を生かし、約20キロの海岸線の岩盤に掘った増殖溝は幅約4メートル、深さ約1メートル、総距離は約17・5キロに及ぶ。ワカメやコンブなどの海藻類の生育に最適な環境を整備しながら、さらに沖合で成育したウニの稚貝などを増殖溝に導入、ウニを蓄養する栽培漁業の場として活用してきた。

 増殖溝のJブルークレジットの取得に向けては22年3月から住友商事と町、3漁協が連携し、藻場の計測やデータ分析を実施。同10月に「洋野町ブルーカーボン増殖協議会」を設立、計測したデータを基にJBEにクレジット認証を申請した。藻場の計測や解析は住友商事グループの技術を活用した。

地元地銀連動で200トンを販売

 既にクレジットの取引は始まっており、岩手銀行(盛岡市)も連動し、23年10月からJブルークレジットの一部数量を地場企業に仲介販売する取り組みを始めた。住友商事東北と同行の仲介で24年1月末までに地元建設業の南建設(岩手県軽米町)や八戸液化ガス(青森県八戸市)、家具の販売を手掛けるアイリスチトセ(仙台市)などの企業20社が計約200トンを購入した。クレジットの売り上げは増殖溝の整備などに充てる。

 クレジット発行を受け、ブルーカーボンについて漁業者や行政関係者が学ぶ機会の創出につなげている。昨年5月には町と洋野町ブルーカーボン増殖協議会主催でJBEの桑江理事長を講師に招き、クレジットの制度についての研修を実施した。

 ブルーカーボン事業について同町水産商工課は「地元漁業者が地域や環境とのつながりを意識できる有意義な活動だ。今後も地元の海と水産業を守れるようクレジットを活用する。事業を通じ、町全体で環境に対する意識をより高めていきたい」と力を込める。

出典:水産研究・教育機構

[みなと新聞2024年2月13日18時20分配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/

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