北海道から沖縄までの漁業者を中心に、水産加工流通業者、識者など有志が集まる第1回「水産未来サミット」がこのほど、宮城県気仙沼市で開かれた。海洋環境の変化に合わせた資源管理の改良、持続可能な操業を応援するための金融業界や国の基金からの支援など、将来をにらんだ水産業の変革が提案された。
フィッシャーマン・ジャパン・マーケティングの津田祐樹社長が実行委員長を務め、「日本の水産の未来のために改革を起こしたい」との意気込みで集まった参加者は100人以上。30人以上の実行委員やボランティアスタッフも含めて各自の知識を共有、問題解決策を議論した。
初日には、識者らが登壇し、水産資源管理や海洋環境保全、消費者の啓発などについてパネルディスカッションを行った。資源管理については、登壇した漁業者や識者にとどまらず多数の参加者が発言。海洋環境の変化を口実にせず水産資源管理を改良すること、魚の回遊範囲が漁業者の自主管理でカバーしきれない時には資源管理の音頭を行政で取ること、行政が漁獲量の制限をする際には漁獲枠の県別漁法別の配分などについて漁業者側との合意形成を丁寧に図ること、水産予算について補助金・公共工事だけでなく資源管理にも重点を置くこと―などを提言した。
パネルでは、資源や環境の持続可能性に配慮した水産物に、日本の消費者が十分な付加価値を見いだせておらず、背景には水産関係者からの情報提供が足りていないことがあるとの意見も続出。消費者啓発の必要性が示された一方、持続可能性への配慮について説明責任を果たす水産業者に金融機関から優先的に投融資する、持続可能な操業のためのコストを国主導の基金でまかなうなどの提案もあった。
消費者の持続可能性への認知の低さが、安価な違法・無報告・無規制(IUU)漁獲物の輸入規制の弱さや、実際にIUU水産物が輸入されることによる国産水産物の値崩れ、国内漁業者の減収につながっているという研究結果も示された。登壇者らからは、先進諸国がIUU漁獲物の輸入規制を全魚種対象に行うべく体制整備を進める一方、日本では対象種が少なく、対象拡大に政府もより力を入れていくことを期待したいとの要望が複数あった。
2日目には参加者らが数人ずつに分かれ、全員参加型のグループ討論を実施。漁業の新規参入をテーマにしたグループでは、漁業権の付与の基準の不明瞭さが問題視され、漁業権の付与を主導しやすい立場の漁協にメリットのある格好の参入スキームの創設、水産業の現状に不満のある人同士がつながって内側から意見できる体制づくり―などが必要だと考察。消費者啓発をテーマにしたグループでは、次世代の消費者となる子どもたちに魚のおいしさを伝えるためのパッケージ型の漁村体験学習の創出などが提案された。
参加者からは「未来志向の皆さんがリーダーシップを取れるように社会を変えなければ」など、旧来のやり方に捉われず、新たな水産業のあり方を模索するよう促す声が目立った。津田実行委員長は参加者らに「この指とまれ、でプロジェクトチームをつくり、問題解決に持っていきたい」と呼び掛け。閉会後、参加メンバーからはすでに複数のプロジェクトテーマが挙げられており、発案者と賛同者がチームとなって実践していく流れだ。
同サミットは来年、第2回として鹿児島県での開催を予定している。
[みなと新聞2024年4月2日18時20分配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/
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