水産流通適正化法(流適法)の一部改正法について、水産庁は国内漁業が対象の特定第一種水産動植物のうち特別資源(第二号)に指定する太平洋クロマグロ沿岸漁業の漁獲可能量(TAC)管理年度と合わせ2026年4月に施行し、輸入品を規制する同二種にはヨシキリザメ・アオザメの追加を視野に入れる今後の方向性を示した。
改正流適法の今後の方向性は9月6日、10月3日に東京都内で開催した「水産流通の適正化推進会議」(座長・浜田武士北海学園大教授)が21日に取りまとめた後、水産庁漁政部加工流通課の中平英典課長が報道陣に説明したもの。
青森・大間産クロマグロの漁獲量が未報告だった事例を受けた流適法の改正について、会議では特別資源の対象魚種に太平洋クロマグロの大型魚(30キロ以上、加工品は除く)を指定。体制を整備するための準備期間の確保と沿岸漁業のTAC管理年度を考慮し、26年4月1日の施行を要請。省令はこの1年前、25年4月より前をめどに交付したいとした。
取扱業者が個体別に重量などを記録する義務については、現場負担を軽減する仕組みが焦点となった。タグやQRコードの使用を推進するが、現在用いられている取引伝票も使用可能とするなど現場実態を重んじる。
第一種のアワビとナマコについても、今年7月末時点で全国の漁協の6割以上が届け出済みとしつつ、電子化と漁獲番号伝達システムは中小の産地や同魚種が主要でない事業者では未達成もあると報告。25年12月に適用対象とするシラスウナギも含め、流通量の多いクロマグロ大型魚の対象化を契機として、産地全体の電子化・漁獲番号伝達システムの活用につなげる方向性を定めた。
外国の違法な漁業によるイカ、サンマ、サバ、マイワシの輸入を規制する同二種については、21年8月の会議で新たな魚種を追加するための指定基準を決定していた。
第二種にサメ類視野
①外国漁船が外国法令に反してIUU(違法・無報告・無規制)漁業をする恐れ②資源状況が悪いまたは地域漁業管理機関(RFMO)などの資源管理が実施されている、または重量当たりの単価が高い③日本に一定量以上の輸出があるか急増している④法執行体制その他の法施行準備の観点で実行可能である―の基準で検証した結果、ヨシキリザメ・アオザメは「日本の関税コードが分かれておらず、輸入量の統計データがないため③の基準に当てはまるか不明」と注意した上で、特に①のリスクが大きいため、規制対象魚種への指定を検討するとした。
この他、エビやビンナガは中程度のリスクを持つため基準への該当性を注視するとした。
現行の二種について適法採捕証明書発行を求める外国との協議については、48の国(輸入金額シェアで97%)と完了し、9の国・地域と協議を継続していると説明。協議中の国は宣誓書の確認・署名で流通を止めないよう措置する。
また、採捕国が日本に向けると想定せず第三国を経由して輸入する場合、日本の求める様式で適法採捕の証明書が発行されない問題に対しては可能な限り様式の統一を検討する。
この他、欧州連合(EU)の漁獲証明書様式を基準にし、採捕・流通・輸出の各段階で必要としている署名が紙ベースだと事業者の負担になることも見直しの検討事項となった。今年1月に改正されたEUのIUU漁業規則・漁獲証明書様式とも合わせ、EUの電子システム「CATCH」との連携や電子署名も考慮した証明書の電子化を検討すべきとした。
会議では人権問題についても議論した。人権侵害の疑われる企業との取引を停止すれば従業員の仕事も失われるリスクなどを踏まえつつ、各企業が守るべきガイドラインを周知・促進すべきだとまとめた。
[みなと新聞2024年10月23日18時10分配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/
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