みなと新聞

【みなと新聞】資源回復に科学と透明性を 未来サミット、水産庁に提言

2026.05.19

 水産未来サミットの「国に現場の声を届けるプロジェクト(PJ)」は13日、水産庁の藤田仁司長官らを訪ね、国内の水産資源の回復に向けた政策提言を手渡した。海洋環境や水産資源の悪化を研究し、沿岸漁業の管理策や藻場など環境の修復策を改善する目的で、各種新規事業を考案し、現状年89億円の研究予算を160億円確保するよう提案。資源管理へ国民の協力機運を高めるべく、関連会合の透明化策も具体的に求めた。

 提言では、漁獲枠の不透明性を問題視した。昨年、スルメイカや太平洋系のサバ類の枠を科学者の当初勧告より緩めるよう、政治家を含む関係者の要請活動があり、要請直後に実際に増枠が起きたことを指摘。その際、増枠が過剰漁獲や資源悪化を起こすリスクをどこまで抑えるべきか、具体的な検討が足りていなかったとし、対策案を示した。

 打開に向け、漁獲枠や資源管理協定を定める会合の運営改善を提言。会議の前提としての「漁獲制限は水産業の邪魔ではなく、経営保護」という意識共有▽悲観的なデータ(例・資源が特定の海域で多いだけで他海域では少ない)も無視せず考慮すること▽データ不足時に獲りすぎずに様子見し(予防原則を取り入れ)、資源悪化リスクを一定以下に抑える方法の具体化▽関連会合の傍聴募集早期化、ネット公開などによる透明性向上▽政治家など非専門家の意見を資源管理に反映する場合の科学的な正当性の公表▽データがないことを資源管理緩和の口実としない代わり、水産経営を守る政策論をセットで議論すること―などを列挙した。

 漁獲抑制時も水産経営を守るため、科学的根拠の充実した漁業管理への減収補填(ほてん、積立ぷらすなど)の優先配分だけでなく、漁業のランニングコストに対する低利・好条件での融資・不漁時の返済猶予▽獲り控えで魚価を高めざるを得ない漁業者を買い支えるための加工流通業への補助―を提案。魚種別の漁獲量制限を守りづらい、狙っていない魚種も混獲してしまいやすい漁法に対しては、従来の自主規制の知見を参照した代替管理策を活用しつつ、そこに科学的な効果検証を加えていく方向性を示した。

 これらを通じ、水産資源の維持回復を図り、そこに協力する水産関係者を可視化してヒーローにすべきだと展望。国家としての食料安全保障・タンパク質確保のみならず、沿岸地域の再興につなげていくべきだと訴えた。

漁業の「改善目指す」
未来サミットに藤田長官

 13日、水産未来サミットの「国に現場の声を届けるプロジェクト(PJ)」が水産庁の藤田仁司長官に資源回復策などを盛り込んだ提言を手渡した。提言に対し、藤田長官は、努力する漁業者が認められるべきだという方向性に共感。「(第三者の)フィルターを通さずに聞いた意見を参考に改善を目指したい」と応えた。

 水産未来サミットは、全国の漁業者や水産加工流通業者、研究者など有志が水産業の将来に向けて必要な変革を合宿形式で議論して実践を目指すもの。PJは北海道から九州の漁業者6人などを含む15人の有志で、提言にはフィッシャーマン・ジャパン・マーケティングの津田祐樹社長、海光物産の大野和彦社長、漁業者の高松亮輔氏(北海道)、東京海洋大の松井隆宏准教授らが参加。提言チームにはその他、小笠原宏一氏(漁業者、北海道)、竹下千代太氏(漁業者、長崎)、久保幹太氏(同)、フィッシャーマン・ジャパン・マーケティング土合和樹COO、産地ストーリーズ小山田誠一代表ら15人が参加した。いずれも昨年200人以上の水産関係者が参加した同サミットの有志。

 PJは昨年9月にも、小泉進次郎農林水産相(当時)に提言を提出していた。

 当時の内容は、沿岸の小規模漁業の対象魚種を中心とする研究予算の倍増▽厳しい自主管理をする漁業者がそうでない漁業者に同程度の補助金しか与えられないひずみを是正する、沿岸漁業の資源管理協定への科学的根拠の活用▽漁獲枠(TAC)の緩すぎや厳しすぎを防ぐためのリアルタイムデータの活用▽藻場など環境修復への科学の活用▽研究の人員を外注などで手当てすることによる、漁業者との対話時間の捻出と科学的な資源回復策への協力機運醸成▽資源の回復に向けて漁獲規制をしたい漁業者がいるにもかかわらず、漁連などが立場上、表立って規制に賛成しづらい政策決定構造の見直し―など。

[みなと新聞2026年5月13日17時50分配信]
https://www.minato-yamaguchi.co.jp/minato/

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